うんざりしてしまったよ(『うるさい妹たち』増村保造)

ぼくが若さを尊いものと認識したことはなかったし、むしろ若さを疎ましいものとして捉えていた。それなのに、いつの間にか自分が歳を重ねるにつれて、嫌がっていた若さに自分は囚われていて、むしろ執着さえしていたことに気がついてしまう。鏡の前にいる男は、ただの何の取り柄もない中年男がいるだけだ。そこには人生に対して充実感に満ちた幸福感はない。映画を観ている内に自分が認識したのは、もはや川口浩には野次馬的な興味が起きるのみで、共感するのは、もっぱら永井智雄の方だということだ。それにしたって、彼ほどのプチブル的人生を味わうことがなく、今はただ死に向かって生きていくのみだ。誤解して欲しくないのは、それが人生の一面であり、ある種の不幸を自分の人生に飾り立てて、負の意味で肯定的に生きようとはしていないという事。つまりは、自分の僅かな知性を、人生への正確な認識と正しい方向付けに役立たせようとしている。それについては、多少は褒めてほしいんだ。