血の色は死の色(『刑事マルティン・ベック』ボー・ヴィーデルベリ)

映画における死の表現には、いくつかやり方があるのだろうけど、殺人の瞬間は勿論、その後の遺体処理を丹念に描くことで、死を表す方法をこの映画で知った。殺人の瞬間よりも生々しい死の触感、それは視覚として映画に表されるのだけれども、その視覚を通じて強く五感に訴えかけるものでもあり、さらにはそれを通り越して、ぼくには警官としての職業の倦怠までもを感じることを体験した。それが、この映画にとって最も訴えたかったものかは分からないけれども、体に直接訴えかけるものとして、ぼくはこの映画を記憶したし、それは通常の記憶とはべつの経験として記憶されたものであり、いつまでもぼくの体の中に残っているものだ。それは映画としての価値の1つとして評価しても良いのではないかと考えている。