戦争について(『あしたてんきになれ』松本隆)

雨の戦場はつらいのか。塹壕に隠れ照準機に目を括りつける瞬間、風が舞う中の甲板の上でロープを巻きつける瞬間、綿の布地から水が下着に染み込んでくる。雨が止めば止んだで、得られた広大な視界は、自分の姿をさらけ出すことと同じだ。あしたてんきになれ、と呟きながら、瞼をおおう水滴をはらうだけだ。だから、ほんの一瞬雲間から差す陽光で出来あがった虹に、少しの希望を滲ませる。歌も唄えない、口笛もふけないぼくらは、そんな希望を、視界に一瞬浮かんだ七色の輝きに託すだけだ。あしたてんきになれ、あしたてんきになれ。