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孤独を愛せるか

永久に生きるものに幸せはあるのだろうか。愛する人の死の連なりは、どれだけ精神を痛めつけるのか、ぼくには想像もつかない。その時々の愛情だけで、僕たちは孤独に耐えられるのか。想い出という名の過去に対する記憶は、必ず死のイメージと結びつく。死に…

永遠の詩 「レッド・ツェッペリンに捧ぐ」

ぼくが欲しいのは、便利な言葉じゃない 必要な言葉だ ぼくの心が欲するもの それはただ必要な言葉だ 言葉は旋律とともに現れる もしかしたら旋律のみでもいいかもしれない その旋律が言葉を蘇らせるから 旋律が言葉を産み出すから もしかしたら旋律さえいら…

映画にとって必要なもの(『ビッグ・ヒート 復讐は俺に任せろ』フリッツ・ラング)

ぼくにとって映画に必要なものは動作だ。動作が全てを支配する。動作とは効率的な動きだ。効率的とは目的を最小限の動きで達成することだ。登場人物が各々の思惑に対して効率的な動作を行い、物語が進んでゆく。それは理想郷であり、ぼくはその理想郷を見る…

偉そうにふるまいたい(『秋日和』小津安二郎)

若いころに対峙するのに苦手だった男たちのようになりたい。彼らは決してこちらを理解しようとしなかった。彼らの理解内にぼくたちを閉じ込めていた。その絶対的な精神的距離が、彼らを成熟させたものとして見せたし、その精神的距離の遠さが彼らと話をする…

うんざりしてしまったよ(『うるさい妹たち』増村保造)

ぼくが若さを尊いものと認識したことはなかったし、むしろ若さを疎ましいものとして捉えていた。それなのに、いつの間にか自分が歳を重ねるにつれて、嫌がっていた若さに自分は囚われていて、むしろ執着さえしていたことに気がついてしまう。鏡の前にいる男…

お伽噺の理論(『山椒大夫』溝口健二)

残酷な物語が欲しければお伽噺を。なぜならそこには、人間から乖離した、冷たい意志があるから。ここで言う冷たいとは、ぼくたちの感情にまったく触れないことを意味する。生や死や勇気や喜びや悲しみや妬みや恨みや、そういうことから離れきった意志。なぜ…

そばにいてくれ(「Fire and Rain」ジェームズ・テイラー)

同時上映が何だったか忘れたけど、メインの映画があって、サブで『旅立ちの時』という映画を学生のときに観た。確か反体制運動家の親にリバー・フェニックスが引きずりまわされる、というような物語だった。好きなタイプの話ではなかったが、妙に心に残った…

反フェティシズム(『突破口』ドン・シーゲル)

音楽でも映画でも良いのだけれども、フェティシズムを持ち出されるのが苦手だ。自分の存在を表明するための唯一の手段であればしょうがないけれども、それが共同体を存続するための手段の場合、ぼくは辟易としてしまう。それって、自分の好きなものに対する…

くだらないこと(『ウィークエンド』ジャン・リュック・ゴダール)

仏車を欲しいと思う。ぼくは車を新車を1台、中古車を1台買ったけれども、両方とも独車だ。ぼくが独車を購入したのは、自分があまり車をいじらないことを意味する。今乗っているのはカブリオレで、ソフト・トップだ。次に車を購入することがあれば、またソフ…

深夜のお茶(『It Don't Bother Me 』Bert Jansch)

深夜にお茶を飲むようになったのは、病気をしてから。大きな手術をして、医者からは酒を飲んでも良いと言われたが、何だか飲むのがいやになってしまった。病気をするまでは、深夜に酒を飲んで現実逃避しないと眠れなかった。今は、体調という現実と向き合わ…

血の色は死の色(『刑事マルティン・ベック』ボー・ヴィーデルベリ)

映画における死の表現には、いくつかやり方があるのだろうけど、殺人の瞬間は勿論、その後の遺体処理を丹念に描くことで、死を表す方法をこの映画で知った。殺人の瞬間よりも生々しい死の触感、それは視覚として映画に表されるのだけれども、その視覚を通じ…

世界の国からこんにちは(『恋人たちは濡れた』神代辰巳)

故郷って嫌だな。いや違う。ぼくを知っている故郷って嫌なんだ。もしぼくを知らない故郷があったらどうなるのかな。でもそんなことは無理だ。じゃあ、こちらから徹底的に知らないことにしよう。そうだ、自分が知らないと言えば、世界は見知らぬものになるん…

最大の悲劇(『赤心の歌』アル・クーパー)

自分でやりたいけど、自分では演奏しきれない曲を作ってしまった。自分が一番愛しているのに、自分にはそれを表現できる術を持っていないんだ。だからと言って、他のひとに渡したくはない。頭の中で奏でられる最高の歌は、自分を通して、ひどくつまらないも…

天国に一番近い時間(『'ROUND ABOUT MIDNIGHT』大友克洋)

今からくる?そう、いいね。腹がへったな。何か食べにいこうか。こんな時間に、どこがやっているかな。そうだ、あそこならまだやってる。あしたはどうしようか。まあ、いいか。ちょっと、寒いね。おまえの手袋貸してくれよ。あ、けっこういいやつ持ってるね…

戦争について(『あしたてんきになれ』松本隆)

雨の戦場はつらいのか。塹壕に隠れ照準機に目を括りつける瞬間、風が舞う中の甲板の上でロープを巻きつける瞬間、綿の布地から水が下着に染み込んでくる。雨が止めば止んだで、得られた広大な視界は、自分の姿をさらけ出すことと同じだ。あしたてんきになれ…

悪としての自然(『脱出』ジョン・ブアマン)

偽悪的でもなく露悪的でもない、純粋な悪。それが人里離れた村から放たれるのは、どうしようもなく凡庸なのだけれど、悪は純度が高ければ高いほど凡庸になるはずだ。だからこそ、ここで表現される悪は、全く的確なものとなる。その的確さは、自然までをも悪…

二つの世界(『狩人の夜』チャールズ・ロートン)

きれいは穢い、穢いはきれい。いろんなことを二分割する。いろんな価値観で二分割する。世界がきれいに二分割されたとき、驚くことにそれは、まったく同一のものとなる。それは、指に描かれた「LOVE」と「HATE」が表現するものと同じだ。ぼくが生きている世…

悪夢のような画(『ポイント・ブランク』ジョン・ブアマン)

何度観ても、初めて観たような気がする。でも全てはわかっている。それは毎日みる悪夢と同じだ。始まりと終わりはいつも一緒。でもそこに入り込むと、いつも驚いてしまう。何もかもが明らかなのに、すべてが曖昧だ。そこに描かれている風景は、湿度が低い空…